JAXAのH3ロケット1号機の打ち上げ「失敗」報道は「中止」という表現が妥当

JAXAのH3ロケット 打ち上げは中止政治・経済・社会

JAXAのH3ロケット1号機の打ち上げは残念ながら打ち上げられなかった。それを打ち上げ「失敗」という表現に固執する報道があり、個人的には中止という表現が妥当だと思ったので理由をまとめた。

KiTsuneの見解
  • 「飛ばなかった」のではなく判断で「飛ばさなかった」ので中止が妥当
  • すでに速報性ではなく正確な報道に重きを置く時
  • 「打ち上げ失敗」では西谷氏の言う「墜落や爆発」とミスリードされる

H3ロケットの打ち上げは失敗したのか

2023年2月17日にJAXAのロケット「H3」の打ち上げがあったが、残念ながら途中でトラブルがあり打ち上げは中止となった。

そうした内容の記者会見で共同通信の記者が「それは一般に失敗と言います」と発言した事が発端だ。

言い方も捨て台詞のようで感じが悪かった事もあり、この時点で失敗なのか中止中断なのかネットで話題になっていた。

そんな中、西谷格というフリーライターの方が失敗という表現が妥当という以下の記事を出していた。

ロケットではなく、ロケット花火の打ち上げで考えてみればいい。導火線に着火しました。順調に導火線が燃えていきました。ところが、ある地点で“何らかの異常”によって、火が消えてしまいました。そして、ロケット花火は飛びませんでした――。

この場合、中止や中断と呼ぶことも可能ではあるが、より端的に伝えるなら「打ち上げは失敗しました」と言うほうが適切だ。安全装置が作動したのであれ、導火線が湿っていたのであれ、とにかく22年ぶりの新型ロケット打ち上げは、目的を達成できなかった。すなわち、打ち上げに「失敗」したのだ(繰り返すが、これは敗北でも厄災でも破滅でもない。ただ、失敗したというだけだ)。

墜落や爆発といった狭義の失敗ではないものの、目的が達せられなかった以上、広い意味では失敗と言える。「想定内の失敗」と言えば、伝わるだろうか。

国産ロケットH3「失敗」明言も 共同通信の対応は全然問題ないワケ

要するにロケットの打ち上げは失敗している、端的に伝えるなら中止や中断よりも失敗の方が適切と言った主張のようだ。

打ち上げ前にストップされている

まず今回のH3ロケットはそもそも打ち上げられていない。直前でストップさせたからだ。

H3ロケット試験機1号機 打上げ中止の原因調査について

最終的なSRB-3点火の前にアラートが出て停止。フェイルセールといってとにかくヤバい場合は自動的にストップさせる機構となっている。その後意図的な判断で中止に。

上で引用した西谷氏のロケット花火の例で言えば、今回の件は「導火線に着火しました〜」ではなく「持ってきたライターなんか変な音するから今日の花火はやめとこう」だと思う。つまり導火線に火を着けていない。

その事態を総括する時「ロケット花火は飛ばなかった=打ち上げ失敗」と表現するのは正しくないと思う。正確には「ロケット花火は飛ばなかった=打ち上げ中止」だろう。

点火シークエンスに入り、ここから先はフェイルセーフもなく緊急停止ボタンを押したわけでもないのに発射されなかった、とかなら打ち上げの失敗と言ってもいいと思う。でもJAXAのコメントと資料が事実なら今回はそうではないんだよね。

仮定・例
  • 点火して本来発射されるはずなのに発射されなかった→これなら失敗とも言える

もう端的に伝えるフェイズではない

一方で「端的に伝えるなら」の部分は一理あると思います。ライター・メディアの視点に立って言うなら速報であり、素早く要点のみを伝える必要があったなら失敗というワードを選んだのも理解できる。その時点ではそのチョイスが妥当だったのかもしれない。

しかし西谷氏の記事は特に速報というわけではなく、また各所から指摘があってなお意図的にこの表現を使っている様子。もう端的に言うフェイズではなく正確な報道に重きを置くフェイズなのだからこれはおかしいと思う。

狭義の失敗とミスリードされる

今回の件も打ち上げというイベント全体の失敗、つまり「2023年2月17日のロケット打ち上げ計画が失敗」という表現なら理解できる↓

打ち上げ中止のパターン
「この日の打ち上げ計画は失敗」とは言える

本当に「ロケットの打ち上げ失敗」というのは以下のようなケースを指すのではないだろうか↓

打ち上げ失敗のパターン
ロケットの打ち上げが失敗というのはこっち

広い意味での失敗と言いたいなら「2月17日に打ち上げる計画は失敗した」と書けばいいのであり、「ロケットの打ち上げが失敗」では西谷氏自身の言う「墜落や爆発」といった狭い意味の失敗とミスリードされてしまうだろう。

引用した通り西谷氏は自身の記事内でこの部分にも言及しているのに、なぜその上で狭義の方で取られかねない表現にこだわるのか疑問だ。

KiTsuneの見解
  • 「飛ばなかった」のではなく判断で「飛ばさなかった」ので中止が妥当
  • すでに速報性ではなく正確な報道に重きを置く時
  • 「打ち上げ失敗」では西谷氏の言う「墜落や爆発」とミスリードされる

2023年3月7日追記:今度は打ち上げが失敗した様子。発射した後に問題があって失敗しているのでこれがまさに打ち上げ失敗パターン。

日本の新たな主力ロケット「H3」の初号機が7日午前10時37分、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられましたが2段目のロケットが点火せず、その後、指令破壊の信号が送られ、打ち上げは失敗しました。JAXA=宇宙航空研究開発機構が詳しい状況を調べています。

「H3」打ち上げ失敗【速報中】2段目点火せず発射指令破壊

記事内に出てきた関連リンク↓

国産ロケットH3「失敗」明言も 共同通信の対応は全然問題ないワケ | news.yahoo.co.jp

H3ロケット試験機1号機 打上げ中止の原因調査について | mext.go.jp

「H3」打ち上げ失敗【速報中】2段目点火せず発射指令破壊 | www3.nhk.or.jp

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